よはくのものづくり 残糸(ざんし)
経験と体験をかねて、制限のある中でつくる面白さ「残糸のはなし」
もともと秋田の六郷さん(ニット工場)が残糸で作っているニットを見せてくれて、残っている糸を使って、こんな風に製品にできるんだと思ったのが残糸との出会いだった。
それで、初めての残糸企画で、もちもちニットをつくった。
同じ頃に、大正紡績(大阪にある紡績工場)さんからも、残糸のリストを見せてもらう機会があり、いろんな種類の原料があることと、そこからいろんな糸が作れるということにワクワクして、これはすごいと思った。
残糸は余っている糸だから、量も決まっていて、それ以上は作れない。
100キロだったら100キロ。
もしそれ以上追加で作りたいってなったら、納期もめちゃくちゃかかるし、糸から経済ロットで作るから、量も多いのとコストも上がる。
だから残糸でつくる製品は、ほぼ追加生産ができない。
使い勝手は悪いかもしれないけど、その制限の中で作るならすごくお得。
自分でオリジナルの糸を作りたかったんだけど、いかんせん何も分からなくて、勉強にもなるから、残糸でいろいろな糸を使ってみた。
そうすると配合とか、だんだん経験でわかってくるようになった。
残糸を製品化することで、その素材がどういう風合いで、どんな着心地になるかが分かるから、それは実体験とともに得られる情報になっていった。
1から作ると値段も高くなっちゃうので、せっかく作って売れなかったらもったいない。
そういう意味で 経験と体験とを兼ねて残糸を使うようになった。
使っているうちに、残糸がすごく面白くなってきて、
自分流にアレンジしたりとか、生地やさんに相談して、このぐらいのゲージで編んだ方がいいとか、それもまたノウハウとして教えてくれるから、より自分の作りたいものが、正確に作れるようになってきた。
そういう意味で、残糸は良いものを使って実験できているので、とてもありがたい。
糸としても面白いし、服にしたときも、ああこうなった!みたいな感動が自分の中にあって、それを皆と一緒に体験できて、きもちいいってなったときにやっぱり嬉しいし、廃棄される可能性の高い糸で、しかもいい糸を使って服になって着られるのもいいなと思う。
yohakuだから残糸がつかえると思う。
残糸が80キロだったら80キロで作れる生産の仕方をするだけ。
経験としてノウハウの1つになるし、次につながるから80キロで全然よくて、残糸が使いづらいとかはない。
糸にあった編み方を勉強できるし、その特性にあった素材ができるから服になったときに気持ちいいと思う。
昨年、大正紡績さんの残糸でつくった2つの素材
どちらも素晴らしい糸。
・「ホワイトカシミヤオーガニック」
オーガニックの超長綿アルティメイトピマ80%とホワイトカシミヤ(カシミヤの中で最高級ランク)20%のブレンド。なめらかなとろみと繊細な柔らかさがある極上の素材。
これはチャコールグレー1色を残っていた量オール買いして、1色をひたすら作って売っていく方式。今年販売している分で無くなったら終わり。
・「メリノウール裏毛」
表はメリノウール(羊毛の中で最高級とされている)の残糸で、
裏糸は無撚糸(むねんし 綿そのままの状態の糸)、そうすることで全体的にコストが下げられる。残糸を部分的につかうこともある。
自分でつくるのって限界があるけど、のこってるのを見せてもらって
いろんな人が考えてつくったのだから面白いし、その中からいいなと思ったのが定番素材になっていく。
綿100%でもいろんな綿(ワタ)があって、シャリ感だったり、なめらかさだったり、番手(糸の太さ)で違ったり、
大正紡績さんは、残糸でもトレースがとれているから、産地での特徴の違いなどを知ることができる。
綿を知るんだけど、作ってる場所も知れる。
その辺も販売するときにお客さんに伝えられると面白いかなと思う。
作っている背景が必ずあって、人の温度を感じられたらいいなと思って
知らないことってたくさんあるから、綿を通してそこを知るのって面白いなと思う。
残糸はつかっていて本当にたのしい 全部いい糸だから参考になる。